Tuksuhan (からかいの恋愛術)
フィリピン人の恋愛スタイルについてのフィリピン人による考察。タガログ語を交えてフィリピン人のメンタリティを語ります。
伝統的なフィリピンの未婚女性は内気でなかなか本当の気持ちを表現しようとしません。本当は彼女をくどいている男性のことが好きでも、彼からの誘いをあえて断ることさえもあります。
Tuksuhan lang "(トゥクスハン・ラン:からかっているだけ)は、恋人同士に発展する可能性を秘めた若い男女がよく使う恋愛術といえます。
「最近僕たちはけっこういい感じ。もしかすると両想いかもしれない!このまま上手く行けば恋人になれるかもしれない。だけど上手くいかなければ恥をかいてしまう….。」
そういうシチュエーションに置かれたことがある人は多いかもしれませんね。
アジア文化に共通することでもあるのですが、フィリピン人は「面子を失う」こと極力避けたがります。望みが全くないのにあたってくだけて大恥をかくことを防ぐために、フィリピン人男性はTuksuhan(からかい)でリスクを軽減します。また、くどいている女性の気持ちを「無難に探る」ための方法としてこのTuksuhanを使います。ヘラヘラしているのも術のうちなのです。
そしてTuksuhanの結果、徹底的な拒絶をくらったり、無視されてしまったら、「この恋愛に全く望みがない」というメッセージをその男性は受け取ることになります。残念ながらその女性と恋愛関係には発展する見込みはないようですが、大恥をかくというリスクを逃れることができます。なぜならば別に真剣にくどいていたわけではないのですから。ただふざけていただけなのですから。
ちなみにBasted (バステッド:英単語 busted=「くだけた」から来ている)というタガログ語のスラングがありますが、これは最初(Tuksuhanの段階)から女性が全く興味を示さず門前払いされてしまった人を意味します。恋に破れた男性をsawi(サウィ:失恋者)、恋愛に縁がない人をlabless(ラブレス:英語の"loveless"で愛に恵まれない者)と言います。
しかし、もしもTuksuhanを試みた結果、どうやら女性に脈がありそうな様子であれば(例えば、優しく返してくれた。「からかい」に対して怒らなかった等)、Tuksuhanは止めにして真面目にくどく段階に入ります。そこからが本当の勝負となります。Tuksuhan の段階をクリアできれば、情熱的に自分をアピールし、押して押しまくっても良いのです。
恋愛感情を女性に表現できない男性をtorpe (トルペ:鈍くて馬鹿な男)、dungo(ドゥンゴ:内気すぎる、臆病な男)、または単にduwag(ドゥワッグ:臆病者・意気地なし)と呼びます。男性がtorpeと呼ばれる場合、1.その男は女の口説き方がわからない 2.わからないふりをしている 3. 彼女も実はその男に気があるのを気づかない鈍感男、という意味が込められています。女性の心は複雑です。最初からガンガン押してくる男性は警戒し、信用しません。しかしあまりにも鈍感で、女心を読めない男性には痺れを切らすか、呆れてしまうのです。
もし男性がtorpeであれば、tulay(トゥライ:橋)が必要となります。その男性と彼が恋する女性の共通の友人で、気持ちをかわりに彼女に伝えてくれる橋渡し役となる人です。これもある意味では気持ちをさぐるための「テスト」といえます。女性が自分に対して全く興味がないとわかると、面子を保つためにくどくのをやめます。こういった方法はアジアではよくありますが、フィリピンも例外ではありません。基本的にフィリピン人はとてもシャイですから・・・
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